語感を比べる辞典が出ました

 2010-12-15

日本語 語感の辞典

その他

 先の日曜日の朝日新聞の読書欄に、面白そうな辞書の記事が
 載っていました。私はいつも語感で悩んでいるので、これは役に立ちそうです。

  「発想・着想・思いつき」「心得・素養・たしなみ」「感激・感動・感銘」…意味は一様であっても言葉には微妙な「語感(=語のもつ感じ)」の違いがある。著者の日本語研究の集大成として、「語感の違い(=ニュアンス)」を中心に解説した初の辞典が誕生。最適かつ多彩な言葉を探りながら、日本語の生きた知識が身に付く、蘊蓄満載の読める辞典。(本書の紹介文から引用)

  翻訳をしながら、翻訳を編集しながら、適した訳語は何か、
 迷うこと、類語を探すことが度々。そして、見つけた用語が
 果たしてどんな語感を含んでいるのか、客観的なデータが
 必要です。こういうことを研究している学者
 がいるのですね。ありがたいことです。

 文章を書く方にも、おすすめです。
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心を揺さぶる「放蕩息子の帰郷」の朗読(ケセン語)

 2009-11-03

 近年の聖書翻訳で、ケセン語訳聖書ほど、衝撃を与えたものはないでしょう。

 かつてアイヌ民族が住んでいた東北地方は、807年に大和民族に征服されて、何百年の年をへます。アイヌ語なまりの言葉に、関東や関西の言葉が混じっていって東北弁が形成されたそうですが、 とくに明治政府による強力な国策で東京の山手言葉が標準語になってからは、ますます方言が滅びる方向に向かいました。

 関東の影響を受けた北限といわれる気仙沼地方の方言を「ケセン語」と名づけ、聖書翻訳をするために辞書を作り、ついには四福音書のすべてをケセン語に翻訳。
 そのなかで「ルカによる福音書」にある有名なイエスのたとえ話「放蕩息子の帰郷」を音声で聞くことができます。

 感動しました。訳者であり、朗読者である山浦玄嗣氏(カトリック教徒)には頭が下がります。

 意訳し過ぎかとも思われる箇所もありますが、ギリシャ語原典から訳したケセン語の迫力。
 これまで聞いてきた父(神)の愛を表すなじみの物語が、息を吹き返したかのように立体的によみがえってきます。
 なぜか懐かしいような異次元の世界に、しばらく耳をお傾けください。

    ケセン語による「放蕩息子」
 CD付きの本は、ネットからも購入できます。
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◎号外◎ 中村妙子先生の翻訳教室・最終回

 2007-09-28
 7月に、二回ほど、関連記事を載せましたが、名翻訳家として有名な中村妙子先生の翻訳教室が、本日最終回を迎えました。残念ですが、事情でしばらく活動を休止なさるそうです。
 幸いなことに私は、最後の公開講座に参加することができたというわけです。

しめくくりの昼食会
 2002年から始まったこのコースは初め、前後期の授業があったということです。参加はそのとき、数名でした。年を重ね、段々と生徒さんが増え、今回は30数名で教室はいっぱいでした。

 今日は、なごり惜しいということで、授業を30分早めて切り上げ、おなじ明日館(F・ライト設計)のホールで、昼食会となりました。

 わたしはモタモタしていて席が見つからず、どうしたものかと思っていたら、「あちらが空いているので座ったら?」と親切に言ってくださる方がいて、「ああ、そうですか・・」と移動して座ったら、なんと、中村先生の右隣りなので、びっくり。そんなぁー。
 日本人のみなさん、遠慮深いから、私がこんなことに・・。もう手遅れです。

先生のお人柄
 中村先生はとても穏やかで、謙遜で、温かいお人柄です。それを慕ってか、たくさんのおしとやかな女性たちが集っていました。翻訳家を目指してガツガツ勉強しに来ているというより、先生の翻訳本が大好きで、それを読んで人生を豊かにされてきた、というような方々が集まっている感じです。

 先生に感謝と尊敬の念をお持ちの方々ばかりでし、いっしょの場所で、同じ空気を吸い、翻訳の話しを聴けるだけで光栄というような、静かでありながら、熱烈なファンが多いようでした。なかには、長野や群馬からの参加者もいました。
 そういうわけで、隣りにいる私が先生との会話を独占したら嫉妬の目にさらされる思い、遠慮しつつ少しだけお話しました。

 これだけ尊敬を集めている翻訳家がいるって、素晴らしいですね。食事中、代表して三人の方が感謝の言葉を述べました。五年間、講座を受け続けた方もいました。

 先生を見ると、ほとんど箸に手をつけていません。そこで私は、
 「どうなさいましたか? ごはんが堅めだからですか?」と尋ねると、
 「いえ、胸がいっぱいで・・」との言葉。
 それを聞いて、私も感動しました。(宮内庁御用達の弁当。私すべて平らげましたが・・。)

二冊の紹介図書
 最後に、最近訳した二つの本を紹介なさっていました。
 キャサリン・パターソン著『私はだれ? 自分さがしのヒント』(晶文社)
 クリスチャン女性作家が書いた青少年のための信仰入門のような内容。晶文社から出たとは。

 エリナー・ポーター著『ぼく、デイヴィッド』(岩波書店)
 音楽が開く素晴らしい世界を題材にした青少年向け小説

 どちらも魅力的な内容ですね。どなたか読んだ方いますか?
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『カラマーゾフの兄弟』がベストセラー?!

 2007-08-28
 先週、サイトを見ていたら、「『カラマーゾフの兄弟』がベストセラー」というニュースを目にし、驚いた。サイト情報によると、

 ●新訳「カラマーゾフの兄弟」が26万部を突破、古典として異例のベストセラー
 ●混沌の時代を生きるヒント、現代に通じるテーマ
 ●東京大学教授が新入生に読ませたい小説ナンバーワン

なのだそうだ。

新訳の魅力
 古典新訳シリーズを発行している光文社の担当者は、
 「新訳がリズムと勢いがあって読みやすく、若いころに読んで挫折した団塊の世代が読み直しているとともに、巧みな仕掛けがちりばめられたミステリーとしてのおもしろさが若い人に受けている。扱うテーマが、男女の愛憎、幼児虐待、テロリズム、父子・兄弟関係や貧困、宗教、国家など、現代にも十分通じている」と述べている。

 新訳の訳者、亀山郁夫氏は、
「運命を描くことで人間の存在の小ささを、また罪を描くことで人間の存在の大きさを表現している。人間の残酷さを直視して作品を書いたドストエフスキーの問題意識には現代性がある」と話しているとか。(詳しくは上のサイトをご欄ください。)

 このブログでは昨年、「古典の待望の新訳登場」として、現代の若い世代に読みやすい古典の翻訳が登場したことに歓迎の意を表した。これまでのアカデミズム偏重の堅苦しい翻訳調は、キリスト教界の翻訳(とくに現代の古典的な著作の翻訳)を含め、なんとかならないかと残念に思っていた。
 ネット書店、アマゾンの読者評でも熱い反響が寄せられている。新訳『カラマーゾフの兄弟(1)』(1~5巻までの読者評をごらんあれ)

 私は大学時代、ドストエフスキーのおおよその代表作(「悪霊」「白痴」「カラマーゾフ」「罪と罰」)は読破したが、それは、キリスト信仰を持つ以前のことだった。キリスト者になってから、福音派の中に、あまり彼の読者がいないようで、少なからずらず落胆した。
 かつて読んだ印象は、今やすっかり薄れているので、この新訳でまた読んでみようかと思う。

キリスト教による救済がテーマか?
 以下のウィキベディアの解説によると、ドストエフスキーの著作は、「当時(19世紀)広まっていた理性万能主義(社会主義)思想に影響を受けた知識階級(インテリ)の暴力的な革命を否定し、キリスト教に基づく魂の救済を訴えているとされる」とある。

 ここでいうキリスト教とは、作家にとってロシア正教なのかも知れないが、現代に通じる重要なキリスト者の作家であることは否定しようがない。色恋沙汰を絡めた「父親殺し」というテーマは背筋がぞっとするが、登場人物の多彩な心理描写は圧倒される、そのなかで、純真な信仰持つアリョーシャの存在は、「掃き溜めに鶴」「泥中の蓮」のような希望の光を放っている。

 現在、日本の有名な小説家たちも、彼の作品から大きな影響を受けている。日本の作家志望のキリスト者がいたら、彼の著作は必読書だ。これからの若い世代はもっと読んで、人間のスピリチュアルな世界の奥深さ、豊かさ、人間のおぞましさ、素晴らしさを十分堪能してほしい。音楽で言えば、キリスト教文学の中の『マタイ受難曲』(バッハ)として位置づけられようか。
 ただ、その世界の重さ、暗さ、悲惨さ、深刻さに、相当気分が落ち込むことは確か。そのぶん、希望の光の眩しさが目にしみることでしょう。

ウィキペディアの解説
ドストエフスキー  カラマーゾフの兄弟
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中村先生の翻訳教室に通っています(その2)

 2007-07-31
 中村妙子氏による翻訳教室のレポート、第2弾です。
 クラスは8月は夏休みで、9月に二回クラスがあって終了です。

 先週のクラスでは、「自費出版のことについて話して欲しい」と私が先生より依頼を受けましたので、後半に5-10分ほどお話しを教室の中でしました。しばらく前に、自費出版について被害を受けたと訴えた人が新聞で話題になったことを受けたものです。写真は、そのお礼としていただいたサイン入りの訳本です。うれしい。


 さて、翻訳の注意点ですが、以前に書いたものの続きを、いくらか書きたいと思います。題の次の解説は私なりの理解で書き留めたものです。

言外の意味を読みとる力
 文章で表されている背景にある心の動き、ニュアンス、意図によって、訳語の選択が異なってくるので、表面だけ見て訳せばよいわけでない。

文章の有機的連鎖
 文から次の文へ、段落から次の段落へのつながりが、読んでいる人に有機的につながっていくよう配慮。作品としての内容の統一感が大事。

うそ字を書くな
 あいまいな言葉は辞書を引いて確かめよ。用字、意味について知らない言葉は自分のうちにたくさんあるので、辞書はこまめにひく。

凝り過ぎると興さめ
 手を入れ過ぎ、凝った文にし過ぎるとよくない。

作者に密着せよ
 何を言いたいのか、作者の心情、視点、問題意識、意図を探りつつ、作者に肉迫する

強調点を把握
 文章、段落で、作者は何に強調点を置いているのか把握すること。

重大事を招く数字
 数字は一桁間違うと大変なことになる。

ミスプリントも自分で発見
 原文にミスプリントがあることがある。

辞書の訳語を鵜呑みにせず
 辞書に載ってる訳語が適さないことがある。

想像力は控えめに
 背景や言外の意味を読みとる必要があるが、あまりに飛躍すると原文から離れてしまう。

主語の結び方が行方不明にならないよう
 文の主語がいつの間にか、他の流れとごっちゃになり、落ち着き所を見失って不明瞭な訳文になることがある。

補足するのも訳のうち
 そのままでは日本の読者に意味不明な場合、ほどよい補足も必要

 次のサイトに、翻訳とC.S.ルイスについて、ちょっとしたインタビューが載っているのをたまたま発見。

 近い将来、翻訳にまつわる本をみすず書房から出版の予定だそうです。これは楽しみ。
 翻訳教室を来年も続けるかどうかは未定とのこと。

 翻訳教室関連記事は今回で終了。
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