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ベルリンでの夜中の出来事

 2006-01-14
夜中のモスクワ駅を発つ
 先の記事で、若いころドイツに渡ったとき、モスクワで起きた出来事を書きました。
 これには、さらに続きがありす。また一つ不思議な出来事があったのです。モスクワから列車の旅を経てベルリンに着いたときのことでした。
 当時のソ連旅行は、公認の旅行会社によって滞在場所、交通機関の利用時間が決められてしまいました。モスクワに滞在したあとわたしは、夜中のモスクワ駅、12時発のベルリン行きにしか乗れませんでした。きっと、通過するソ連領土内を外国人に見られたくなかったからでしょう。その列車は、まる一日かかって次の日の夜中の12時にベルリンに着きました。

 その日程を知らされたのは日本を出発する直前でした。ベルリンに夜中に着くことに気づいたとき、その日の宿を決める時間もなく、日本を出なければなりませんでした。じつは、これが一番の心配の種でした。

 列車の中は、東ドイツに出稼ぎにいくキエフ出身の陽気な人たちと一緒になり、最初緊張したものの楽しい旅になりました。「日本の車はリッター何キロ走るのか」みたいな質問を受け、言葉も通じずで、しどろもどろのドイツ語、英語で会話したことを覚えています。

夜中のベルリン駅に着く
 さて、長い列車の旅は終わり、大きな荷物をかかえたまま、当時の西ベルリンのセンター駅である動物園駅で降りました。構内で徹夜する覚悟でした。
 手持ちぶさたなので、構内の交番で大きなスーツケースを預かってもらい、ぶらぶら構内を見学しました。時刻表を掲示してあるホールのようなところに来ました。人はまばらでした。

 そこに、細い身体をした少し猫背で黒髪、目がキョロキョロした男性が立って、時刻表を見上げていました。わたしは日本人かなぁーと、少しその方を眺めていました。そこで、何が起こったと思います?

 その方が、なんとなく見覚えのある方だったのです!

「まさか~! うそだろ~。そら似だろう~。・・・う~ん・・・」と思いましたが、近づいて、おずおずと声をかけてみました。

「あの~、日本の方ですか?」
「そうです」
「間違ったらすみませんが、もしかしたら○○先生ではありませんか?」
(その方は、わたしが大学一年の教養過程で授業を受けた「西洋史」の先生そっくりだったのです・・・・)

「ええ? そ、そうですが・・・、いったいあなたは?」

もちろん、わたしもびっくりです、わたしは満面の笑みをうかべてこう言いました。

「やっぱり。わたしは先生の授業を受けたことがあります。詳しいことは忘れましたがとても印象深く覚えています」

 なんということ! 考えてもみてください。日本をはるか離れたベルリン、しかも夜中ですよ! こんな出会いってあるのでしょうか!

 先生は、「なぜ、あなたがドイツに?」ということで、わたしは目的を話し、今晩泊まる宿がない事情も話しました。そしたら、
「じゃ、泊まれる宿を探しましょう。ちょうどいまバイロイト行きの列車の時刻を調べていたところで、これから宿を探そうかなと思っていたところです」
「ええ? よろしいんですか? ど、どうぞ、よろしくお願いします!」

てなことで、二人で真夜中のベルリンで宿を探すことになりました。先生は何度もドイツに来ておられ、市内も詳しい。心もとないわたしに比べ、ドイツ語は問題ありません。宿はすぐに見つかりました。

問題解決
 こうして、出身大学の先生と同じ部屋に泊めていただくことになったのです!!

 いやはや、いやはや、じつにほっとしましたよ。「地獄で仏」とはこのこと、おっと、すみません、撤回します。「天使の助け」とはこのことです。

 先生がなぜ夜中の駅にやって来たかといいますと、ヨーロッパ研究家であり、オペラ・ファンだった先生が、有名なベルリン・ドイツオペラ劇場でワーグナーの作品を鑑賞してきた帰りだったのです。

 ワーグナーのオペラ(楽劇)といえば、一つの作品が長大で、ふつうのコンサートだったら夜7時から始まるところが、夕方の4-5時ころから始まって夜中近くまで上演するという、とんでもないものです。だから、夜中に駅に来られたというわけです。そして、ワーグナーファンの聖地、バイロイトに行くための下調べだったのです。

 次の朝、先生は旅に出発なさいました。「これからも連絡を取りましょう」ということで別れました。
 先生は帰国なさってから、この出来事を大学新聞の記事で取り上げました。わたしものちほど、その記事を読みましたよー。

主はあなたの足をよろけさせず、あなたを守る方は、まどろむこともない。
                             (詩篇121:3)

 こうしてスタートを切ったわたしの二年にわたるドイツ滞在は、よいことばかりでなく、危機もありました。でもその都度、これらの出来事を思い起こして、励ましを得ました。神は真実な方です・・・・。
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