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藤掛明著『雨降りの心理学』を読んで

 2010-12-27
4889780947雨降りの心理学―雨が心を動かすとき
藤掛 明
燃焼社 2010-07

by G-Tools

 たまに外国から帰国するとき、成田の上空にさしかかると曇り空であることが多く、先日まで過ごした大陸のすっきりした天気が懐かしくなる。しかしあらためて自分が、曇りと雨の多い風土に生まれ育ったことを再確認する。

 藤掛明著『雨降りの心理学』というユニークな本を手にとった。(かなり前に読了したが、今やっとブログに。すでに読者感想がいくつかブログで読めるので、私は総論的に書くことにする)。
 著者は、心の病の改善、回復を援助する臨床心理学を専門としており、またその経験や学識を次世代に伝える教育に携わっている。臨床とは、つねに現実的な問題を抱えた生身の人間の心の秘密とつきあう現場だ。そのため、情報の守秘義務があるので、こうした現代文学に現れた人間像を解説して、その本質を私たちに伝えようとしている。

雨と人間の心模様
 この手法は、著者が言及しているように河合隼雄が先駆者だろうが、本書の独創的なところは、数多くの小説から「雨降り」の場面を選び、登場人物と雨との遭遇を通して、その心の綾を読み取ってくれる点だ。雨は身近で、自然で、珍しくない、しかし、そこから入ることで、人間の心の現実と、ひるがえって文学作品を今までにない新たな目で見させてくれていると思う。また、日本の近代、現代小説をあまり読まず、敬遠していた私に、その価値を教えてくれる大変ありがたい入門書になった。

 私はこれまでの自分を、雨との関係で眺めたことはなく、感じてみることもしてこなかった。読者のほとんどが同じではないだろうか。それは私たちの「無意識」への態度と共通する。多種多様な人生模様が、まったくコンテキストが異なる小説が、雨という人間の操作の及ばない自然現象(一般恩寵---恵み)を通して共通の視点から見えてくるのが、私には驚きだった。ただ、その雨と人との出会いも、きわめて多種多用で、思わぬ展開によって道が開かれたり、閉ざされたり、翻弄されたり、幸いだったりする。そして、「なるほど、そうした見方もあるのか」という気づきを教えてくれる。そうならば、私の人生もまんざら捨てたものではないのではないか、と。

なんだかほっとする読後感
 本書は、押し付けがましくなく、すべてを語ろうとする過剰さもないおかげか、読後に豊かな余韻が残り、読者それぞれに、「果たして自分は?」と自己観察(自己を知る)の世界に導かれると思う。

 読み終わったとき、なぜかわからないが、静かな喜びと落ち着きが自分のうちに生まれた。それは、あらゆる人間は貴賎の別なく、また、どんな事件や出来事が起ころうと、たとえ苦難はあっても、それぞれに価値ある、統合された人生を生きることができる価値ある存在だという納得。
 あらゆる階層で生きる人々の人生に注がれる著者のまなざしが温かい。


 ところで、私はかつて親元の生活で、何度も傘を無くし、母を嘆かせた。だから今は出かけるとき、自分で空を見計って、多少の雨ならできるだけ傘を持たずに出る。天気予報はよっぽどでない限り調べない。強い雨であれば、しぶしぶ傘を持って出る。でも、傘を差すのは心地よい。ーーこれって何だろう。。
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【2010/12/28 22:13】 | クレオパ #- | [edit]












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